投稿者:大徳醤油(株) 浄慶 拓志(北はりま支部所属)
兵庫県養父市にある大徳醤油株式会社。
地方にある小さな会社ではあるものの、その「こだわり」と「伝統」を広報することで、商品のみならず、「地域の魅力」をも全国に広めていこうと尽力されています。
大徳醤油が戦略的に取り組んできた広報活動で注目するべきは「キーワードの選定」と「クラウドファンディング」について。自分たちの印象を、誰にどのように伝えていきたいか。それを明確に思い描くことによって、ブランディングを確立されました。
兵庫県但馬地方から全国へ。
ファンを生み出し続ける中小零細企業のブランディングの方法について、大徳醤油株式会社の代表取締役社長、浄慶拓志氏(兵庫県中小企業家同友会北はりま支部所属)に手記を寄せていただきました。
大徳醤油の経営理念に「いのちを育むたべものづくり」という言葉があります。
「いのちを育むたべものづくり」という言葉には、無添加や国産原料にこだわり続けてきた、先代社長である父が大切にしてきたものづくりへの想いが込められています。
しかし、経営理念が単なるスローガンになってしまってはいけません。経営理念をより浸透させ、従業員全員が経営理念を拠り所として行動していくようになるためにはどうすれば良いのか。
そして経営理念を深堀していこう、具体的にしようと思い至った結果、
「有機」
「地域」
「伝統」
という3つのキーワードを作ることにしました。
(実は同友会入会当初に恐れ多くも例会での報告者を任され、その時、先輩経営者のみなさんの時間をお借りするのにいい加減な話はできないなと思いました。どうやったら自社の取組を伝えれるかと悩んだ末にひねり出したのがこの3つのキーワードです)
以来、経営理念を深掘りして作った3つのキーワードを、取引先や全国の消費者に向けて発信を続けています。
(兵庫県中小企業家同友会では、例会といって、自分が実践してきた経営体験を報告する機会があります。人前で話をするのは勇気がいりますが、引き受けてみると、発表者自身が誰よりも得るものが大きいように感じています)
経営理念を分解した3つのキーワード。
理念を具体的にしたキーワードを設定することで、その言葉に対して、行動指針が定まり目標を設定できるようになりました。その目標は、以下のようなフレーズで表現しています。
1「有機」
原料へとことんこだわる。小さい企業だが原料の安心安全へのこだわりなら全国で1番を目指せる
2「地域」
但馬地域の生産者と共にものづくり、製品を通して地域の生産者を知ってもらえるハブ企業を目指す
3「伝統」
伝統の天然醸造製法を未来のこどもたちに残していく
3つのキーワードを設定しましたが、中でも「伝統」の取り組みについては、全国の醸造蔵のみならず、少子高齢化や過疎化の問題を持つ日本全体にとって大切な問題です。
日本全国で1200社ある醤油蔵は長年の競争と変化の末に、そのほとんどが自社での醸造を残せなくなってしまいました。それは伝統の醤油醸造が消えつつあるということです。
数は少なくなりましたが、今なお、蔵付き酵母により長期熟成させる伝統の醤油醸造を残す醤油蔵は、これを未来に残していく使命があるのではないかと私は考えています。
では、伝統の醸造を残していくために具体的に何をしていくか。
伝統醸造に取り組む醸造蔵を増やしていくことは、昔と比べ醤油の価格が何分の一にもなっている現状では設備投資の面だけ見てもとても困難なことです。それなら家庭で醤油を作ってもらうことに取り組もうと考えました。

2018年、大徳醤油は「購入型」のクラウドファンディングに挑戦しました。
クラウドファンディングにはいくつかタイプがありそれぞれ特徴がありますが、この「購入型」が自社にはあっていると思いました。クラウドファンディングはよく資金調達といわれますが、このタイプは販路開拓と同時にファンづくりをする仕組みと捉えると一番しっくりきます。
しっかりと自社の考えを伝えることができ、それに共感していただけるファンを作ると同時に、短期間である程度まとまった売上を作れるとても良いプラットフォームです。これからの社会ではその企業を応援したいかどうかという判断基準が大きな付加価値になってくるのだと思っています。その点でもクラウドファンディングは役割を果たします。
URL https://readyfor.jp/projects/tedukurishoyu
このクラウドファンディングでは醤油づくりの原点に戻って「家庭」での醤油づくりを広めることで未来のこどもたちに伝統醸造を残していこうという「醤油じかん」プロジェクトを立ち上げました。家庭で1年の時間をかけて手作りする醤油キットを広める取り組みです。全国でこのキットを使い手作り醤油ワークショップなども行い、地道に伝えていく取り組みも行っています。
大徳醤油ではいのちを育むたべものづくりの理念のもと原材料に妥協せず、1~2年の時間をかけて醤油を醸造しています。これは、一方で原価率を引き上げ商売としてはなかなか難しい部分がありますが、ここで時間やコストを惜しむと理念に沿わないことになります。手づくり醤油キットは、醸造にかける時間=コストを体験として販売することで、結果利益率の向上にもつながる商品となっています
WEBでの発信と合わせて、ワークショップや展示会などリアルでの発信も同時進行で行っています。地道な取り組みの積み重ねではありますが、有名な企業から急に電話がかかってきたり、アマゾンの醤油ランキングで売上1位を記録したりとじわじわと成果を感じています。
SNS等で誰でも発信者になれる時代。
リアルとネットの取組からファンをつくり、理念により商品群に一貫性を持たせることでそれが企業ブランドに繋がっていくのだと信じています。
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