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ダブルワーク(副業・兼業)の場合、労働時間は通算されると聞きました。この場合、残業手当についてはどのように処理をすれば良いのか。本業、複業のどちらが支払い義務を負うのか教えてください。

投稿者:ユニバー社会保険労務士・行政書士事務所 中道 三喜男(兵庫支部所属)

「収入を増やしたい」「ひとつの仕事だけでは生活できない」「自分が活躍できる場を広げたい」

 

様々な理由でダブルワーク(副業・兼業)を行う人が増えています。また、政府もイノベーションの促進、人材確保、人材育成等の面からダブルワークを推進しています。

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ダブルワーク(副業・兼業)をしている労働者の残業手当の支払いのルールについて

今回は、雇用している労働者がダブルワーク(副業・兼業)を行った場合の残業手当の支払いについて、ご説明いたします。

 

厚労省は、副業・兼業の時間外労働の割増賃金のガイドラインを示しています。

(副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和2年9月改定 厚労省)抜粋)

 

≪時間外労働の割増賃金の取扱い≫

(ア) 割増賃金の支払義務 

各々の使用者は、自らの事業場における労働時間制度を基に、他の使用者の事業場における所定労働時間・所定外労働時間についての労働者からの申告等により、まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、それぞれの事業場での所定労働時間・所定外労働時間を通算した労働時間を把握し、その労働時間について、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要がある。

 

 

上記ガイドラインを、実際の場面に当てはめていきますと・・・

 

《パターン1》

・1日8hの労働契約を締結している労働者が、就業後に副業先との間で2時間の労働契約を締結する場合

 

→当社が先に労働契約を締結していますので、1日8h・週40hの労働に関して割増賃金を支払う必要はありません。

 

一方、副業先は、1日2hの労働ですが、通算して1日8時間を超えますので、2hについて割増賃金を支払う必要があります。

 

《パターン2》

・1日6hの労働契約を締結している社員が、就業後に副業先と間で2時間の労働契約を締結、そしてその労働者が、ある日に当社で7h(所定労働時間6h、所定外労働時間1h)働いた後、副業先で2h働いた場合

  

→当社の労働契約の7hと副業先の労働契約の2hを通算すると9時間になり、通算して1日8hを超えます。この場合、当社の所定外労働時間1hは割増賃金を支払う必要があります。

 

パターン2の場合、副業しない場合は、1日8h以内であった為、所定外労働時間の1hは割増賃金を支払う必要がありませんでしたが、副業したことで通算して8hを超える為、1h割増賃金を支払う必要がでてきます。

 

尚、副業・兼業に伴う割増賃金の計算は、事業主は、労働者からの申告に基づいて行います。そして、「副業・兼業に係る相談、自己申告等を行ったことにより不利益な取り扱いをすることはできない。」とガイドラインで定められています。