投稿者:北播支部(株)多鹿計算センター 岡村 信哉

「経理は事務作業に過ぎない」もしそうお考えだとしたら、それは非常にもったいないことです。今、会計の世界では、AIという強力な「道具」を活用することで、社長やスタッフが数字を打ち込む時間をゼロにし、より高度な経営判断に集中できる環境が整っています。
会計士として多くの現場を見てきた経験から断言しますが、これからはAIを単なる機械として遠ざけるのではなく、士業という専門家とセットで活用する「最強の伴走者」として向き合うことが、企業の成長スピードを決定づけます。
まず、社内の手を煩わせている「入力作業」をAIという道具に委譲しましょう。
柱その1:手元の領収書は「スマホで撮って、瞬時に格納」
出先での会食や備品の購入。その場でスマホを取り出し、専用アプリで領収書の写真を撮る。撮影されたデータはAIが即座に解析し、会計ソフトへ格納されます。
柱その2:銀行・信販は「繋ぐだけで、自動で記録」
ネットバンキングや法人カードを会計ソフトに一度連携させれば、すべての入出金明細が自動でソフトに流れ込みます。通帳を記帳しに行き、一行ずつ打ち込む時間は、物理的に消滅します。
私の顧問先には、長年ビジネスの第一線で活躍されている70代後半の現役社長様がいらっしゃいますが、この機能を非常にスマートに使いこなしておられます。この社長様が最新ツールを取り入れた理由は、単に「効率」を求めたからではありません。「変化の激しい時代だからこそ、経営者が把握すべき数字の入り口に、曖昧さを残したくない」という、ベテランゆえの危機感からです。
ここで「うちは取引規模がもっと大きく、複雑だからそんなに単純にはいかない」と思われるかもしれません。しかし、実は「規模が大きく複雑な会社ほど、経営者が入り口を把握し続けるために、AIによる自動化が不可欠」になるのです。
新しい仕組みを導入する際、最も大きな壁となるのはシステムそのものではなく、「今までの慣れたやり方を変えることへの抵抗感」です。現場のスタッフや社長ご自身が「今のままでも回っているのに」と感じるのは、ごく自然な反応です。
大切なのは、やり方を180度変えるのではなく、「不要な作業をそっと手放し、時代に合わせてアジャスト(調整)していく」という、しなやかな姿勢です。
変化へのストレスを和らげるコツは、最初から100点を目指さず、「まずは7割、8割の出来でいい」と割り切ることです。
AIが「下書き」を作り、士業が「清書」する: 膨大な取引をAIが「8割の精度」でざっと仕分け、その中から重要なもの、AIが迷ったものを私たちがプロの目でチェックし、修正します。
「教育」は専門家の仕事: AIに自社のルールを記憶させる作業(初期学習)は、私たち士業が並走して行います。現場のスタッフが一人で悩む必要はありません。
「間違えても、士業が後で直してくれる」。この安心感こそが、変化へのアジャストをスムーズにする最大の特効薬となります。
仕組み化が進めば、それは自然と 「会社をミスと不正から守る仕組み(内部統制)」 になります。
データの真正性: 銀行から直接取り込んだデータは改ざんが困難です。取引量が多くても、入力ミスを物理的に封じ込めます。
プロセスの透明化: 「誰が、いつ撮ったか」という履歴が残ることで、不透明な経費精算を許さない空気が生まれます。
属人化の解消: 「あの人しか分からない」というブラックボックスをなくすことは、会社が規模を拡大しても安定して走り続けるための必須条件です。
ソフト連携: 銀行とカードを会計ソフトに接続する。
スマホ撮影の習慣化: まずは社長や役員から「店を出たらすぐ撮る」を試してみる。
【士業との並走】7割合格の心構え: 最初の3ヶ月はAIの誤りを「教育中」と割り切り、専門家と一緒に修正する。
月次の振り返り: AIが高速で出した数字を元に、資金繰りや投資の相談を士業と行う。
AIは士業の代わりではなく、社長と私たちが、より本質的な「経営の話」をするための時間を作るためのツールです。
ベテラン経営者様がその経験に最新の道具を掛け合わせているように、「変化を恐れず、しなやかにアジャストしていく」という一歩を踏み出しませんか?「いきなり10割」は不要です。その「7割の出来」を私たちが10割の信頼性に仕上げ、盤石な経営基盤を共に作っていきましょう。
(株)多鹿計算センター 岡村 信哉
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