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人材の定着こそが最大の経営戦略

投稿者:東神戸支部 社会保険労務士法人パール社労士オフィス 藤本佳子

 

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人材の定着こそが最大の経営戦略

こんにちは。社会保険労務士法人パール社労士オフィスの藤本佳子です。


早速ですが、想像してみてください。
もし来月、あなたの会社の中堅社員が3人同時に退職するとしたらどうなるでしょうか。

日々の実務や後輩育成を担う人材を一度に失う影響は計り知れません。即戦力の確保が難しい中小企業にとって、それは経営の根幹を揺るがす深刻な事態です。

今、「人材の採用・定着」は中小企業にとって最大の経営課題です。たった一人の採用にも求人広告や紹介会社へのフィー、研修などで数十万から数百万円単位の費用がかかります。ところが、せっかく採用した社員が早期に辞めてしまえば、その費用だけでなく教育に投じた時間や労力も無駄になり、まさに「経営資源の損失」となります。さらに退職が続けば、残った社員のモチベーションや職場全体の士気が下がり、組織全体の生産性も低下します。

だからこそ「社員が安心して活躍し続けられる仕組み」を整えることが、最も費用対効果の高い投資になります。

1.採用はゴールではなくスタート――最初の成功体験を設計する

社員が定着するかどうかは、まず入社直後の仕事に大きく左右されます。

新しい環境で「自分は役に立てている」と実感できるかどうかがポイントになります。

・入社後1週間以内に完了できる小さなミッションを用意する
・その仕事の意義や位置づけを丁寧に伝える

・達成したら称賛し、社内で共有する

こうした工夫によって、社員は早期に成功体験を積むことができます。「この会社でやっていけそうだ」という感覚が持てれば、退職リスクは大幅に減少します。

また、社員が誇りを持てる商品やサービスを磨き続けることも「ここで働く意味」を強く実感させ、定着を後押しします。

 

2.いつでも相談できるルートを常設する――孤立を防ぐ仕組み

退職の背景には「相談できない環境」や「納得できない評価」が存在します。小さな不満でも放置されれば、突然の退職につながります。

必要なのは「問題が起きてから」ではなく、「日常的に」相談できる仕組みです。メンター制度、月1回程度の短時間面談、日報へのコメント、簡易アンケートなどは、社員が声にしにくい不満や普段は表に出にくい小さな悩みを拾う有効な手段です。
また、会社は、社員に「自分は会社から何を期待されているのか」を理解してもらえるよう、評価基準や役割期待を明確に示すことも欠かせません。透明性のある評価制度は、社員の納得感を高め、成長意欲を引き出す原動力となります。

 

3.業務の抱え込みをなくす――棚卸しとやめる業務の決定

中小企業の現場では、特定の社員に業務が集中しがちです。やりがいを持って働いていても、限界を超えれば疲弊します。
そこで必要なのが業務の棚卸しです。すべての業務を書き出して優先順位を整理し、「やめる業務」を明確に決めることが重要です。重要度が低い業務を削減する勇気が、持続可能な働き方を支えます。加えて、マニュアルや引継ぎ体制を整えて属人化を防げば、誰かが休んでも現場は止まりません。
さらに、日常業務の中で自動化できる作業は思い切ってDX化を進めることで、社員の負担を減らし、本来の業務に集中できる環境をつくれます。
「心置きなく休める職場」は、組織の持続力を強化します。

 

4.メンタル不調の連鎖を止める――小さなサインを見逃さない

中小企業では一人の不調が職場全体に波及することが少なくありません。誰かが体調を崩せば他の社員の残業が増え、疲労が蓄積し、ミスが増加します。そして、さらに別の社員も不調になるという悪循環に陥ります。

これを断ち切るには、遅刻やミスの増加、メールやチャットの返信遅れといった小さなサインを見逃さず、早めに声をかけることが必要です。業務の一時的な調整やチームでのカバーにより、不調の連鎖を防ぐことができます。

 

5.「後出しジャンケン」をなくす――就業規則を整備し、ルールを明確に

社員が安心して力を発揮するためには、ルールの明確化が欠かせません。賃金、労働時間、休日・休暇、休職・復職、服務規律などの基本的なルールが曖昧なままでは、社員は常に不安を感じます。

多くの組織には「言語化されていない文化」が存在します。暗黙の了解や昔からの慣習は、新入社員にとって分かりにくく、戸惑う原因となります。さらに、ルールを事前に示さず、後から「それはダメ」と伝える「後出しジャンケン」は、社員の混乱を招きます。

だからこそ、就業規則を最新の法令に合わせて整備し、会社のルールを明文化することが重要です。加えて、雇用契約書に労働条件を明記し、入社時に丁寧に説明することも大切です。ルールをあらかじめ共有することで、社員は迷わず力を発揮でき、結果として会社を守ることにもつながります。


6.経営指針を共有する――未来への共感が定着を後押し

「この会社はどこへ向かおうとしているのか」「経営者はどんな覚悟を持っているのか」。この問いに社員が答えられる状態をつくることが、社員の定着に直結します。

経営指針を明文化し、社員と共有することで、社員は自分の仕事の意味や成長の道筋を具体的に描けるようになります。

「なぜこの仕事をするのか」「この会社で働くことでどんな未来を目指せるのか」が伝われば、社員は日々の業務を前向きに取り組めるようになります。

経営者が「未来を一緒につくる」という姿勢を見せることは、社員に誇りと信頼感を与えます。経営指針は、社員の行動や判断を方向づける羅針盤です。その共有こそが、定着を支える力になります。

 

最後に――採用難の時代だからこそ

優秀な社員が定着する会社こそが、真の競争力を発揮できます。賃金や福利厚生を充実させることも大切ですが、それだけでは不十分です。非金銭的な仕組みづくりを積み重ねることが、社員が安心して働き続けられる職場を実現し、結果として人材の定着へとつながります。
優秀な人材に「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる環境づくりこそが、会社の未来を切り拓く最大の経営戦略です。今日からできる小さな一歩を、ぜひ実践してみてください。

 

執筆者紹介

 

社会保険労務士法人パール社労士オフィス 

代表社員 藤本佳子(社会保険労務士)

https://pearl-office.com

 

神戸市を拠点に、中小企業から上場企業まで、幅広い業種の人事・労務をサポート。

就業規則の整備、労務相談、社会保険・労働保険の手続き、助成金申請など、企業の実務に根ざした支援を行っている。

経営者の良きパートナーとして、職場環境の改善を通じ、企業の安定と持続的な成長に貢献している。

 

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