会員企業訪問
VISIT
会員名
前田 達男(代表取締役)
所在地
姫路市東辻井3-159-7
創業
1988年2月
設立
1992年
事業内容
パンの製造販売
従業員数
正社員8名、パート従業員30名
公式サイト
入会年月
1989年11月
事業内容及び企業の沿革
1993年 | 平成5年 | 姫路市今宿「ザ・モール姫路」にベーカリーカフェ出店 本店改装 |
1999年 | 平成11年 | 太子店オープン |
2006年 | 平成18年 | 資本金1,000万円に増資 |
2008年 | 平成20年 | 本店を移転しベーカリーカフェとしてオープン 同時にモール店を閉める |
2011年 | 平成23年 | 太子店を閉店しヤマダストアー青山店に出店 |
2017年 | 平成29年 | 山陽百貨店に出店 卸売をやめる ヤマダストアー新辻井店に本店を移転 |
業界の状況、外部環境の変化とその中での対策
どこの街にも焼きたてのおいしいパン屋さんの1つや2つはあって地元の人に愛されている。経済白書によるとコメの消
費量ほど大きな落ち込みはなく横ばいで推移しているのでパン業界全体の景気は悪くなさそうに思える。
ところが街のパン屋さんの事情はそう安楽ではない。競合店の増加、米食・麺食・パン食など食事の多様化、「無し食」という造語に象徴される食事量の少量化でシワジワと売上は落ちている。加えて大手パン会社の急ピッチな商品開発とおいしさの向上から、1980年代前半をピークにシェアは縮小し、今後も減少は続くと予想される。
そうした情勢にプロムナードは、外部販売の中止と配達のとりやめを決断した。店頭販売に集中するためだ。外部販売の中止とはすなわち売上の減少でどう考えても痛い。しかしこれをやったのにはワケがある。
例えば病院にパンを納めるとなれば、唯でさえ慌ただしい朝の繁忙時はテンヤワンヤになる。また早朝までに焼きたてパンを届けるには夜中の2時から働いてもらうことになるわけで、今どきそれでは社員が定着しないし募集もままならない。
店内はというと厨房は手狭で乱雑になり、そのため機能性は削がれ効率が下がる。外部販売と配達で得る収益にはそんな副作用があったので、ひと思いにバッサリ切り捨てたらお店の雰囲気にゆとりが生まれた。やがて整理整頓された店内はお客様にも好かれ売上も上昇した。
現在取り組んでいることについて
プロムナードには働く人たちが自ら創意工夫して新しいパンを作るチャンスがある。もともとおかし作りが好きで集まった人達だ、自分のアイデアでパンが作れて楽しくないワケがない。作り手が楽しむパン屋のムードからは、強みを活かせる社風が育ち、何が強みかもよくみえる。
今はやる気に溢れた人達だけが働くパン屋さんに変貌した。そんなわけでプロムナードのパンは店舗ごとに商品ラインナップが違っているから食べ比べをしてみるのもおもしろい。
それと並行して事業の引き継ぎに取り組んでいる。後継者は決まった。パン屋を興したパン職人が次にバトンを渡すのはパン職人ではない。たっぷり時間をかけて育成中とのことで、ランチェスター戦略など競争社会に勝ち残る経営の定理を自ら学ぼうとする能動的なアクションが起きている。
社員に対して
街のパン屋さんはこじんまりと瀟洒なお店が多く、働くスタッフは良くも悪くも親密度が高い。おしゃべりに気を取られお客様の気持ちに思いが及ばない、といったシーンも少なからず見受けられる。それではお客様からソッポを向かれても仕方なくお店の評判に直接的な影を落とす。
自分がそうであったようにパン職人の夢は自分のお店を持つことだ。やがてプロムナードを辞め、幾つかのお店を経験し独立するだろう。プロムナードで基本から覚え常識も身に着け一人前の職人となり、やがて開店した地域の人々に愛されるパン職人になって一生続けてほしい、と語る。
同友会への想い
作れば売れ、バイト募集も貼れば来る、そんな時代はとうに過ぎ「どうやったら…?」と戦術を考え続ける毎日。多忙な時間を割いて同友会に顔をだし、何とは無い語り合いから得る情報の多さは相当で、よく練られた戦術には同友会での同志から受け取る情報は不可欠だ。
早朝4時から働く仕事ゆえ、ときに同友会が疎になるが時間という費用をかけ情報を獲りに行く行為こそ同友会活動であった。ゆるい枠組みのなかで、歳の差を超え、性別を超え互いに承認し合う喜びは深い。なにより至れり尽くせりの勉強の会が楽しかったが、それは懇親や交流の愉みとは異う。知らないことが多かったので教えてもらえることが楽しくてしかたなかった。と、会歴30年の前田氏は振り返る。
今後の展望
人に任せる、が上手くいかず存続が危ぶまれるほどの危機に陥ったのが5年前。それ以来、どうやればトップがいなくてもお店がまわるか考え続け、スタッフには「見られている」ことを何度も繰り返し伝えてきた結果、売上が伸び利益は上がった。
今後、パン食も含め食生活の様式が大きく変わるのは確実だが、どう変化するかは予測できない。これからのプロムナードは、おいしいパン作りを骨組みにして、事業戦略という肉付けをしていく。そうして地元の人々に選ばれる地域1番のパン屋さんであり続ける。
編集後記(取材の感想)
取材は本店2階のカフェテリアでさせてもらった。前田さんは「コーヒー4つ」とは注文されない。「僕はマンデリンなんだけど、皆それでいい?」って。全身から優しさがにじみ出るカッコいい人でした。スタッフさんへの想いを語るときは経営者というより師匠の風格が現われる。後継者の話になると、まるでお父さんみたいになる。そんな気取らずニュートラルな前田さんのパンは実に旨い。苦味のコクが苦手な私はブレンドにしました。
文責 西はりま支部:川中