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有限会社いせや写真館

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会員名  

 

西田 晃三(代表取締役)

所在地  

 

兵庫県洲本市海岸通2丁目5-25

創業   

 

1947年

創立   

 

1987年10月2日

事業内容 

 

写真業、ネット貸衣装業

従業員数 

 

25人(正社員4人、パート社員21人)

公式サイト

 

https://www.iseya-photo.com/

入会年月

 

2014年10月

事業内容及び企業の沿革

西田晃三氏は、写真業を先代の父から引き継いだ3代目社長です。いせや写真館では、淡路島の洲本市にある本店と、淡路市の支店(店舗名:シンデレラポエム)の2店舗で写真業を営んでいます。写真業では、各種撮影・デジカメプリント(DPE)だけでなく、フォトウェディング・成人式・七五三・お宮参りなどのスタジオ撮影や、淡路島の自然を活かしたロケーションフォトの他にも発表会や卒業式のビデオ撮影なども行っています。シンデレラポエムは、お店で結婚式の衣装を借りることができる、淡路島で数少ないお店です。

いせや写真館では、平成22年(2010年)2月から、貸衣裳ぽえむという店名で、ネット専門の貸衣装業を営んでいます。ネット貸衣装業では、留袖・色留袖・振袖・訪問着・七五三・ジュニア着物・紋付袴・打掛などの着物中心に全国に宅配にて貸し出しています。写真屋の強みを活かした思い出フォトブックのプレゼントがお客様から絶大な支持を受けており、現在では、配送料の請求書の束が電話帳の厚さになる月もあるほど成長を遂げ、ネット貸衣装業において異業種で参入して大手の一角を担っています。平成28年(2016年)には、業界初の楽天アワードを受賞し、2万5,000店舗の中からの20店舗に選ばれています。

業界の状況、外部環境の変化とその中での対策

コロナの流行が卒業式や入学式のシーズンと重なり、これらの行事が次々と中止となりました。更に結婚式などのイベント全般が自粛され、写真業・ネット貸衣装業の双方でキャンセルの嵐となり昨年対比最大85%減まで落ち込みました。その結果、作業や受注が大幅に減り、社内の雰囲気が暗くなっていきました。しかし、社員の提案から、マスクを手作りして販売したり、他にも様々な試作品を作って販売を検討したりすることになり、社内での作業が増えるにつれて、社内の活気が徐々に戻っていきました。西田氏が社員に安心感を与えるため『誰も解雇しない』と全員の前で宣言し、言葉だけでなくそれを用紙に書いて社員全員に手渡したことも、社内の活気につながりました。融資を受けることができたからこそ、このような宣言ができたという側面もありますが、秋に七五三などの需要が回復したときの人手不足を予測し、パートを含め信頼のおける社員を解雇するのは愚策だと気づいたからこそと言えます。実際、昨年秋の需要回復は予想を遥かに超えるものでしたが、雇用を維持したおかげで、大幅な受注増加にも対応出来、例年と大きく変わらない作業時間で繁忙期を乗り越えることができました。

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現在取り組んでいることについて

ネット貸衣装業では、自社サイトの検索順位を上位に維持することが、注文数を確保するうえで重要です。通常、ネットで検索順位を上位に維持するには、高額な広告費がかかります。貸衣裳ぽえむでは、開業当初、できるだけ広告費を抑えるため、口コミを狙って、お客様に思い出フォトブックをプレゼントする企画を行いました。思い出フォトブックは、貸衣裳ぽえむを利用されたお客様からご提供頂いた複数の写真データを使って製作した写真集です。思い出フォトブックのプレゼントは、写真業を営んでいるいせや写真館だからこそできるサービスと言えます。衣装レンタルだけでなく思い出として残せる思い出フォトブックが口コミを呼び貸衣裳ぽえむの躍進の原動力となり、今でも人気のサービスとなっています。

最近では、思い出フォトブックだけでなく、家族や友達でシェア出来る感動スライドショーのプレゼントも行っています。感動スライドショーは、お客様からご提供頂いた複数の写真データを1枚1枚スライドさせて表示する動画データです。感動スライドショーのプレゼントも、写真業を営んでいるいせや写真館だからこそできるサービスと言えます。感動スライドショーをプレゼントしたところ、七五三などのお孫さんの写真を両家の祖父母にすぐに見せることができてよかったとか、感動スライドショーを見て感激したなどといった感想がお客様から寄せられるようになり、リピーターの増加につながっています。

社員に対して

平成29年(2017年)に初めて高卒の新卒採用(2名)を行いました。ちょうど大掛かりなシステムを導入するタイミングだったので、新卒社員に新しいシステムを使った受注作業や、お客様対応などを任せました。最初、西田氏が直接指示を出して作業をしてもらっていました。3か月もしたら辞めてしまうかな?と心配しましたが、そのうち新卒社員が自ら考えて作業をするようになり、いつの間にか、新卒社員の方が西田氏よりも業務に詳しくなっていました。ついには、『社長はこれだけやっておいて!』と言うように。19歳の新卒社員のポテンシャルの高さに驚愕した瞬間でした。ベテラン社員が中心となって新卒社員をみんなで育てようという職場環境にもなっていました。「もう俺が前に出なくてもいい」と思い、これをキッカケに社員に様々な仕事を任せるようになったそうです。19歳の新卒社員が「社員を100%信頼して大丈夫だよ」と気づかせてくれました。これが、いせや写真館を大きく成長させる転機になったとも言えそうです。

また、一番の古株である70歳の従業員さんからは、『いせや写真館で働いてたんやで!』と誇らしく言えるようなお店、会社にして欲しいと、いつも言われているそうです。西田氏も、社員には今まで迷惑をかけてばかりだったので社員には幸せになって欲しいと思っているそうです。そのため、西田氏は、例えば、繁忙期でも残業をしなくても回る会社にしたい、お子さんが熱を出した時には休める会社にしたいと、職場環境の整備に日々奮闘しているそうです。

同友会への想い

『私は同友会に育ててもらったようなもの』と西田氏は言います。これは、本当におおげさなことではないようです。西田氏は、繁忙期には午前様が当たり前だった頃、売り上げがぐんぐんと上昇していく中、このままでは、社員がみんな疲弊し、辞めてしまうのではないかと感じていました。このとき、同友会で開催されたTOC(Theory-of-Constraints)研修に参加し、業務のボトルネックを改善することができました。その結果、繁忙期でも夜9時に、普段は夜6時には仕事が終わるようになり、遅くまで仕事をするのが難しい社員にとっても働きやすい職場環境に様変わりしました。

また、同友会で学んだMQ管理に変えることで、赤字続きだった支店を黒字に変えることができました。また、同友会の会員から勧められた個人面談をやってみたところ、新卒社員の悩みを知ることができ、その悩みを、同友会で開催されたE G(emergenetics)研修を通じて解決することができました。このような経験から、西田氏は、『経営課題を抱えた経営者には、ぜひ、同友会の門を叩いて欲しいし、同友会をお勧めしたい』と言い続けています。

今後の展望

いせや写真館は、「お客様の思い出作りをお手伝いする」ことを理念に掲げています。写真や衣装はそれを実現するための手段であって、より良い思い出作りができるようにするためには何をすべきかを考え実践しています。その結果、思い出フォトブックや感動スライドショーのような人気のサービスや、衣装が到着するまでの不安を解消するためのサービスなどが続々と誕生しました。

今後は、ネット貸衣装業で培ったノウハウを写真業にも活かしていきたいとのこと。写真業とネット貸衣装業とがお互いの良いところを上手に活用することで、いせや写真館を今まで以上に発展させていきたいと意気込んでいました。

編集後記(取材の感想)

コロナの影響でオンラインでのやり取りが多くなっていましたが、今回の企業訪問では実際に人に会い会話を交わす事ができました。西田氏が今までに事業を進める中で経験したその時々の繊細な心の動きや、ターニングポイントでの洞察、事業に対しての熱意など、満ち溢れるエネルギーを感じとる事ができ、実際に会って会話する事の良さを感じました。このことをきっかけに実際に人に会う事で心が喜び楽しみを覚えることを再確認致しました。コロナを気にする事なく気軽に繋がれるオンラインも上手く使い、両方をバランス良く組み合わせ人との繋がりを楽しむ事を大切にしていきたいと思います。

 

兵庫支部

Beach House popi 橋本 正子

特許業務法人つばさ国際特許事務所 長谷部 政男