会員企業訪問
VISIT
会員名
岸田 耕二(理事長)
所在地
兵庫県神戸市垂水区御霊町6-10(総合相談窓口)兵庫県神戸市垂水区陸ノ町7-16(café iiyo)
創業
1984年
事業内容
障害福祉サービス、相談事業、若年者就労支援
従業員数
60名(内パート10名)
公式サイト
入会年月
2016年7月
事業内容及び企業の沿革
社会福祉法人すいせいは、1984年に神戸市垂水区で精神障がいのある方の支援からスタートしました。岸田氏は2002年に入社し2016年に4代目の理事長として就任されました。同法人の事業は、主に障がいのある方に対して、①一般企業で働くことをサポートする就労移行支援事業、②事業所内で働く練習をする就労継続支援事業、③障がい者の相談窓口として相談支援事業を行っています。そのほかにも、障がいのある方だけでなく生きづらさを抱えている人の支援も行い、学生就職困難者をサポートする学生キャリアサポート事業、生活困窮者への支援、企業に向けて社員のメンタルヘルスをケアする事業なども行っています。通所事業所を中心に神戸市西区・垂水区・明石市で事業を展開しています。
業界の状況、外部環境の変化とその中での対策
現在、全国で精神障がい者900万人、身体障がい者900万人、知的障がい者100万人が障がい者手帳を持っています。また、ひきこもり、発達障がいなど生きづらさを抱えている人は年々増加傾向にあります。
規制緩和により同業他社が増え、社会福祉法人以外にも株式会社の形態で障がい者支援を行う事業所が出来てきました。社会全体で障がい者支援を行うことはよいことですが、残念なことに、中には、利益を重視する一方で支援が充実していない事業所もあり、障がい者支援に対する社会的信頼が低下しているのが実情です。
適切な支援を受けてもらうためにも、同業他社の後塵を拝することのないように、「すいせい」の存在や、活動内容を皆様に知ってもらうように、分かりやすい発信を心がけています。
現在取り組んでいることについて
2020年9月にcafé iiyoをオープンしました。障がいのある方が通所し、カフェの店員や下請け作業などを行っています。社会で生きづらさを感じている方は、役所や施設に相談したくても、そこへ行くには心のハードルをなかなか越えられないけれど、カフェという形であれば気軽に行くことができ、相談もしやすく、また、社会へ出るきっかけにしやすいということで、新しい環境を用意しました。また、地域で一人暮らししているお年寄りから畑作業を教わり、地域の子供や、障がい者が一緒に畑作業を行うイベントを開催するなど、地域の個と個をつなぎ合わせる取り組みも行っています。
公的な補助金の事業だけでなく、独自の事業も展開しています。どこの大学にも1%以上の障がいのある方や就職困難な方がいます。そのため、大学から直接依頼を受け、そういった生徒から就職についての相談や、サポートを行う教授の側から生徒の支援方法などについて相談を受けています。この事業は、元々収益のことを考えて始めた事業ではなく、就職困難な学生の調査などニーズの掘り起こしを行ってきたことが、やがて大学の側から依頼を受け収益事業につながりました。
また、現在は、多様な働き方を広めるべく、超時短労働のあり方を大学の教授などと一緒に研究開発しています。その他、LGBTQや児童養護施設の支援など、誰もが自己肯定感を持って社会で活躍できる仕組みをデザインしようと日々努力しています。
社員に対して
社員には、福祉に関する専門知識だけでは不十分であると伝えています。専門職は、人としての成長が土台にあり、その上に社会人としての成長、その上に専門職としての成長があると考えているので、まずは人として成長しなければ専門職としての成長も限られていると話しています。 すいせいの社員としては、次のような人にはなって欲 しくないと考えています。①正論を言って「やった気になる」人、②出来ない理由を羅列して「反省しない」人、③人の批判をして「自分を高めたつもりになる」人。
すいせいには、5人のディレクター(部長)がおり、それぞれにプロジェクトチームを持っています。新規事業を始める際は、担当ディレクターにみんなの前でプレゼンしてもらい、そこで採用されたものはそれぞれがプロジェクトチームを作り事業展開をする形を取っています。「自律考働」をモットーに、社員には自分自身で考えて行動してもらっています。
同友会への想い
経営という事を勉強するうえで、同友会が一番足腰を鍛えることができると思い入会しました。理事長を引き継いだ際に同友会に入らずに経営をしていたら、視野が狭い経営者になっていたと思います。いろんな社長とお会いできて、覚悟・器について考えるきっかけになりました。
今後の展望
障がいのある方や生きづらさを抱えている方は自己肯定感が低い人が多いです。突出した人を排除し、自己肯定感を高めにくい、これまでの学校教育に疑問を感じています。これまでの教育のままでは、特徴のある人を許せない社会になってしまいます。誰もが自己肯定感を高く持ち、自分にあった場所で輝ける社会にするためには、多様性を認め合い、よい所を伸ばす教育に変える必要があると思います。
すいせいでは、そのような教育の場を創りだしていきたいと考えています。
編集後記(取材の感想)
見学させていただいたcafé iiyoは、古民家を改装した温かみのあるカフェです。取材中も幼稚園のママ友グループが子供を連れてカフェでくつろいでいました。障がいのある人もそうでない人も気軽に立ち寄っておいしいコーヒーでほっこりできる、また立ち寄りたいと思えるカフェでした。
東播支部 社会福祉法人かがやき神戸 理事長 松原 建二